合気の原理「透明な力②=伸筋制御運動の実際」

こんにちは。喜多原 歓喜地です。
今回のテーマは「伸筋制御運動の実際」です。
「伸筋制御運動」は吉丸慶雪派大東流合気柔術の根幹をなす身体操作であり、佐川幸義宗範の言葉「透明な力」を論理的に定義付けたものです。

下記動画も合わせてご参考ください。

 
また「透明な力」の基本概要については以下の記事をご覧ください。

人間が使う力は二種類ある

吉丸慶雪は「人間が使う力は二種類ある」と主張しました。

  1. 人間が日常的に使っている「筋肉による力」
  2. 特殊な身体操作によって使える「体内を流れる力」

この2つ目の力を「伸筋制御運動」とし、「合気」の際に必要な身体操作と定義しました。

「伸筋制御運動」はこれまで武道武術の領域の中で使われていた以下のような様々な力の総称を表す意味でも使われています。

  • 透明な力
  • 呼吸力
  • 中心力
  • 丹田力
  • 勁 力
  • 脱 力

これにより吉丸慶雪は、これまで未定義であった「武術における特殊な力」の共通理解を試みました。

 
また、吉丸慶雪は研究の過程において、この武術的な力を「伸張力」「透徹力」「弛緩力」など様々な言い方で表現してきました。
これは吉丸慶雪の研究段階における発展途上の表現であり、その時の理解に応じて使い分けてきましたが、名称が複数になってしまったため誤解や混乱を招く一因にもなり、そのことは吉丸慶雪本人も後悔していました。

ただ、この名称の変遷も、経緯を知ることで「伸筋制御運動」の理解がより深まりますので、興味のある方は吉丸慶雪の初期の著書から順を追って読むこともお勧めいたします。

最終的には「透明な力」をはじめとする武術において活用する力のことを「伸筋制御運動によって運用される力」として定義しています。

 
ちなみに吉丸慶雪が「伸筋制御運動」に至る思考過程として分かりやすいのが「合気、その論理と実際」です。私は本書で「伸筋制御運動」の全体像を理解することができました。

 

なぜ「伸筋」なのか。

人体は二種類の筋肉から構成されております。その筋肉とは、腕や足を曲げる時に収縮する「屈筋」と、逆に伸ばすときに収縮する「伸筋」です。

「伸筋制御運動」はその名の通り「伸筋」を使います。
しかし「伸筋の力」を使うのではありません。全身の「伸筋」を張り伸ばして、全身を一つに繋ぐのです。
これにより全身が一体となって力を統合することができ、同時に全身が協調して柔らかくしなやかな動作を可能にします。

また同時に「屈筋」に力みがあると「伸筋」と拮抗して、しなやかな動きを疎外します。そのため「屈筋」は「脱力」が要求されます。よく武術的な力は「脱力」だ、という表現がありますが、これは「屈筋」における脱力のことを指します。

よって「伸筋制御運動」を行うための具体的な方法は、
「伸筋」を張り伸ばし、「屈筋」を脱力する。
これを「脱力伸張」と呼びます。

そして全身の筋肉が「脱力伸張」となったとき、全ての動きは「伸筋制御運動」
となります。この状態を吉丸派大東流では、

合気之錬体

と呼び、吉丸派大東流の日常稽古と鍛錬の目的は、この「合気之錬体」を完成させるためのカリキュラムとなっております。
「合気之錬体」についてはまたあらためて紹介させていただきます。

 
 
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
何らかの参考にしていただけたら幸いです。
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