合気の原理①「透明な力について」

皆さんこんにちは。喜多原 歓喜地です。

今回のテーマは「透明な力」です。
おそらく「合気」を探求する人にとって、この言葉を知らない方はいないかと思われます。
大東流合気武術宗範「佐川幸義」の言葉であると同時に「佐川幸義」の名を世に知らしめた言葉でもあります。

そのきっかけとなったのが、その言葉がそのままタイトルとなった著書
不世出の武術家 佐川幸義 透明な力」です。

著者は佐川幸義宗範の門人「木村達雄」師範であり、佐川伝大東流合気武術を継承するお一人でもあります。
内容は木村師範による聞き書きの体裁をとっており、佐川宗範の言葉で溢れ、実際には佐川宗範による大東流合気の解説書と言っても過言ではありません。合気を学習する上では必読の書です。まだの方は必ずお読みください。

また中国武術漫画の金字塔「拳児(3)にも、佐川宗範(作品上表記は佐上宗範)が大東流の技を見せるシーンがありますが、その中でも「透明な力」の解説をしております。こちらも併せてご参考ください。

 

透明な力とは一体何か

佐川幸義宗範は「合気は透明な力を使う」と言われています。
しかし同時に佐川幸義宗範は「透明な力」の本質について、詳しくは話さなかったようです。
もともと大東流は「秘伝」の伝統が色濃い流派ですが、特に実戦武術家で知られる佐川幸義宗範は、内弟子にすら合気の技法を滅多に話さなかったようです。
そのため、様々な憶測ともに「透明な力」と「合気」の混同がなされ、あるいは佐川宗範にしかできない神秘的で特殊な力というふうにも受けとられました。
しかしその特徴は、力まず、しなやかで、柔らかい、それでいて力強く鋭い、といった印象があります。

佐川幸義宗範も「透明な力は、体の力を一切抜いたときに現れる」ということを大切な条件として話されていました。
そのため、日頃の稽古の中でも無駄な力を一切抜いて行うことを指導していたようです。

 

透明な力を定義する

佐川幸義宗範の内弟子であった吉丸慶雪師は、佐川道場を離れ独立後、長年に渡って体験した佐川宗範の技の感触を頼りに、「透明な力」における一つの仮説を提唱します。
それが「伸筋制御運動(弛緩力)」です。
「伸筋」を緩めて張り伸ばし、同時に「屈筋」を脱力することで体全体が繋がり、全身に力が伝達するという作用です。
この考えは太極拳でいうところの「掤(ほう・ポン)」に相当し、柔らかく尚且つ外側には力強く張った状態になります。
吉丸師は佐川道場を去った後、中国武術の研究も行います。
中でも「内家拳」と言われる流派では「勁力」の概念を持ちますが、この「勁力」も「透明な力」と同種のものであると結論づけています。

 

なぜ「透明な力」を「伸筋制御運動」と結論づけられるか

もちろん「透明な力=伸筋制御運動」はというのは吉丸慶雪派の仮説です。しかしその根拠を裏付けるものがあります。
それが佐川幸義宗範が長年続けてきた「鍛錬の内容」です。

佐川宗範は合気の達人であるとともに、苛烈極まる鍛錬を生涯続けたことでも有名です。
しかしなぜ、そもそも力を使わないはずの「合気」に「鍛錬」が必要なのでしょうか。
実は佐川宗範の鍛錬の目的は、単純な筋力アップではなく、全身をより強く一つにするために、伸筋を張り伸ばす鍛錬をしていたのです。
「上げ手」や「木剣素振り」は小手の伸筋を張り伸ばすためです。
「四股」「足上げ」「体捌き」は丹田を形成し、全身を繋ぐためです。
こうした鍛錬の繰り返しにより全身の伸筋がつながって「透明な力」を生み出すことができるのです。

 

結論:柔らかく鋭い動きは全て「伸筋制御運動」

「伸筋制御運動」により、力みのない柔らかな動きを体現できます。
また動きに角がないため、相手とぶつからず力を伝達することができます。
さらに緩急自在で鋭い動きや力強い表現もできます。
陳式太極拳ではゆったりと柔らかな動きの中に、一瞬の「剛」の動きも内在していますが、これも「伸筋制御運動」の表現の一つです。
また「伸筋制御運動」は呼吸によって効果をさらに高めることができます。
このことから塩田剛三先生はこの力を「呼吸力」と呼んだのではないかと推察します。

以上のことから、吉丸派大東流を継承する「歓喜地STUDIO」の考えでは「透明な力」をはじめ、合気を使う際の柔らかな力は全て「伸筋制御運動」として定義しております。
「伸筋制御運動」を認識することで、鍛錬方法やその目的が明確になり、より効率的に合気技法を高めることができます。

 
 
以上、今回は「透明な力」のお話でしたが、いかがでしたでしょうか。
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よろしくお願いします。

喜多原 歓喜地

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